第26話 公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX
キャラクター
笑い男(アオイ)
特A級のハッカー。
あらすじ
肉体は消失しても肉体はネットを巡り、個を特定したまま、その存在を維持し続けられると?
さあ、どうかしら。空を捨てた意志がネットの海で個を維持できるとは考えにくい。
じゃあ、生きてなお個を喪失し続ける者にとってこの世界は絶望?
何をして絶望と捉えるかね。とりあえず死んでみるって手もあるんじゃない。
ネタバレ
考察
事件概要
バラバラになった9課は消滅。
情報操作の結果、公には国家反逆罪の罪に問われていた。
企業脅迫事件新たな事実
政治政党のボス薬島幹事長も関与しており、党本部にセラノ株が保管されている。
セラノ社長が記録していた現金の通し番号(偽造や不正の持ち出しを防ぐために一意の番号を登録して管理すること。)を発見、その通し番号の現金が党幹部に保管されている。
つまり不正な献金、セラノ株を受け取っていたということです。
政治的にセラノゲノミクスを優遇すればするほどセラノ株価は高騰するので薬島幹事長にインセンティブが働きます。
その他の詳しい内容はここで考察しています。
笑い男というMIME
アオイはネットを徘徊しながらセラノゲノミクスを脅迫するメールを発見。
そこには電脳硬化症に対する村井ワクチンの効能やマイクロマシン療法の嘘が暴かれていた。
強いて言えばそれが笑い男のオリジナルのMIME。
アオイが最初の媒介者となり笑い男MIMEを伝播させたのです。
ラストシーン。
曲がらねば 世は渡れず 正しき者に安らかな眠りを
アオイが媒介したMIMEは様々な電脳を介した結果、変異を起こし次の事件を誘発する全く異なるMIMEへと変化していたのです。
まるでウィルスが自己複製エラーを起こして多様化し、様々な形態へと枝分かれするようにMIMEも人を媒介し様々な形へと多様化していきます。
勿論中には致死性の危険なMIMEもありますが、本来ウィルスが寄生したキャリアと共生関係を築くように変異したMIMEの中には人と共生関係を築くものがあります。
ウィルスがキャリアを通して現実世界への影響力を持つように私達も気がつかないうちにMIMEに現実を支配されているかもしれません。
私達の物質世界は相互に作用し合う物質でできている世界です。
例えば目の前に誰かいたとしても、私達を構成する世界の物質(電磁波など)と相互作用していなければ触ることも見ることも「在る」と認識することもできません。
存在するとは誰かと相互作用できるということです。
私達を構成するほとんどの物質と相互作用しないダークマターは観測できません。
しかしダークマターは別の世界では普通に存在してその世界の物質と呼ばれているかもしれません。
逆にその世界ではこの世界に当たり前にある物質が謎の現象と考えられているのです。
物理的に存在していなくても、相互作用できる言葉や思想はお互いを認識し合うことができます。
物理世界だけが唯一の宇宙ではありません。
生命は物質にのみ宿る力ではありません。
言葉や思想も生き、他のMIMEとの生存競争を勝ち抜き知恵をつけていきます。
資本主義が共産主義というMIMEを駆逐したように。
そして資本主義というMIMEは人類に感染した致死性のウィルスかもしれないのです。
感想
検察が企業脅迫に関与した政治家グループを検挙し笑い男事件は終焉を迎えました。
政治家や警察の陰謀も面白い話なんですが、テーマはやっぱり副題にある通りSTAND ALONE COMPLEXという現象です。
一通のメールにある意志は笑い男の脳を通して他者の脳へと媒介され、一つの実体のない大きな意志として現実へと作用していたのです。
知的好奇心をくすぐるテーマとクールな演出で傑作ですね。
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