真生活
キャラクター
サラ
レズビアンの刑事。
ジョージ
妻を殺された大企業の創業者。
ケイティ
サラとジョージの世界に存在する二人に現実に欠かせない存在。
あらすじ
辛い現実を忘れようと足を踏み入れた仮想現実。
しかし次第にどちらが現実か分からなくなっていく。
今夢を見ていないという保証はありません。
さて今この現実は本物でしょうか。
ネタバレ
考察
夢
この話では妻が殺された大企業の創業者のジョージの現実とテロリストを追うレズビアンの刑事サラの現実の区別がつかなくなってしまいます。
サラは仮想現実であるジョージの世界に没入し本来の現実であるサラの生きている世界があまりにも自分に都合が良すぎると考えてしました。
それは信じるに値しないとして結局辛い現実であったジョージの仮想世界を選んだわけです。
集合的無意識
ユングは人類の根底に流れている普遍的な意識が存在するだろうと考えました。
世界中にある似通った神話の存在や音、文字、色に対して人間が描く共通したイメージがその根拠です。
つまり人間の無意識は一番深いところで繋がっているんだということです。
芸術が好きな人の服装、スポーツが好きな人の発想、世界中の洪水伝説の類似性。
何故か共通した潜在意識が存在しているとユングは考えました。
潜在意識
フロイトの潜在意識は普段抑圧された欲望が夢として現れるというものです。
こうしたいああしたいという叶わない願望はストレスなので夢の中で解消しようということですね。
胡蝶の夢
もっと抽象的な中国の説話にある胡蝶の夢もあります。
要約すると
蝶になってヒラヒラと宙を舞う夢から覚めたが、果たして人が蝶になる夢を見ていたのか、それとも今、蝶が人になる夢を見ているのか。
その区別は存在しないではないか。
という哲学的な話です、
夢は夢から覚めて初めてその奇妙さに気がつき、それまでは確かな現実だと受け入れています。
夢の中で主観的にそれを現実だと認識すればそれは現実になってしまうのです。
胡蝶の夢のように今、夢を見ていないと証明するものは存在しません。
今作のように意識以外に現実であるかどうかを判断するものが存在しないとき、何をもとにそれが現実であるのかを判断しますか。
サラは罪悪感という強い負の感情が現実であると判断しました。
より強く現実を感じられる感情こそが現実だと判断したのです。
胡蝶の夢が言うように結局は夢と現実の区別は曖昧です。あなたが現実だと確信している今、夢から覚めて「なんて変な夢だ」となる可能性も否定はできません。
誰しもが奇妙な夢を夢のなかではその夢を現実だと受け入れた経験があると思います。
それくらい現実の認識は曖昧です。この世界そのものが全て偽物であるなら客観的な現実の証明は不可能です。
この世界が現実にはは存在しないコンピューター上の仮想現実であるということも否定はできません。
あなたが嫌な思いをして手に入れた資産は夢の中にしか存在しないのかもしれません。
この世界にある物質が全て偽物である可能性を否定できないとして、何が本物なのかを突き詰めていけば、結局は心の内から湧いてくる感情なのではないかと思います。
楽しいとか嬉しいとか辛いとか。
それこそが確かな現実であり、それだけが私という個の現実を肯定していると感じています。
夢の中に作られた世界でさえ、湧いてくる感情だけは本物のなのです。
夢と現実の区別がつかないのなら、体の外側にある現実にどれほど価値があるでしょうか。
嫌な思いまでして楽しいことを犠牲にしてまで、一生懸命集めた貨幣は夢の終わりと同時に消えてなくなります。
しかし「楽しい夢を見ていたなあ、もう一度同じ夢を見たいなあ」という感情だけは現実に持ち出せる本物なのです。
心の中から湧き上がる感情こそが唯一無二の真実であると私は感じます。
感想
話を進めながらどっちが現実なんだ?と考えさせる面白い展開で引き込まれました。
サラは理想的な現実を結局は自分には値しないとして否定した気持ちも分からなくない。
上手く行き過ぎたらそれを失うのが怖くなる。
そう考えると失うことではなく、執着こそ苦しみの根源なのかな。
この世界は本物か
この世界は仮想現実であるというちょっと衝撃的な仮説。
光の速度に限界があるのはこの世界を走らせるコンピューターの処理能力による制約。
光の速度に近づけば近づくほど時間が遅くなるのは、ゲームで言う処理落ち。
この世界は誰が創造したのか: シミュレーション仮説入門
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夢に興味がある方
本作にも登場する夢に関する一つの考え方です。
ユング 夢分析論
新訳 夢判断 (新潮モダン・クラシックス)
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