アウトブレイク
キャラクター
サム・ダニエルズ
アメリカ軍医大佐。正義感が強い。
ロビー・キーオ
サムの元妻。アメリカの衛生局に努める。
ビリー・フォード
正義感は強いが組織の義務の重要性を理解している。准将。
サムと同期でありボス。
ソルト
少佐。サムの部下だが実地での任務は初めて。
ドナルド・マクリントック
少将。権力者として描かれる。
モターバ
元はアフリカのサルの体に寄生していた。
人間にも感染する致死率100%のウィルス。
アメリカ上陸時に進化し空気感染や高い感染力を手にした。
あらすじ
アフリカで猛威を振るっていたモターバがアメリカに上陸。
アメリカ陸軍軍医として疫病を研究していたサムはアメリカの国民を守るという正義のもと軍の権力構造に戦いを挑む。
ネタバレ
考察
正義vs権力
かなり分かりやすい構図。
ウィルスのパンデミックを描いていますがメインとしては正義vs権力。
自らの立場を守る為にモターバの真相を隠そうとするマクリントックの権力に抗いながら、サムの正義を実行していきます。
それぞれのキャラクターの役割が分かりやすくて、サムとソルトは正義。
フォードは強い正義感を持ちながら、その立場上組織として行動することの重要性を理解しています。
ただ正義に邁進するサムとソルトとは違い、彼には葛藤があります。
彼の葛藤があるからこそ正義を貫く難しさが強調されてより正義が引き立ちます。
サムとソルトの大立ち回り
サムとソルトはウィルスの血清を作るためにその感染経路は遡ってホストを探し回ります。
その過程でおこるマクリントックの命令を受けた兵士との追いかけっこもテンポが良くて面白いし、彼らを出し抜くサムとソルトのコンビは最高でした。
ウィルスに感染した患者を見て吐き出してしまうソルトに、最初は「頼りないな、こいつ直ぐ死ぬな」と思っていましたが、徐々に逞しくなっていきます。
最終的にはサムの軍令違反にノリノリで従っていく彼に魅了されました。
ヘリコプターをジャックしてテレビ局に乗り込んで電波ジャック。しかもノリノリでやるんです。
過去を過大評価する
サムは危機意識が高く、早くにモターバの危険性を察知しフォードに危機が迫っており対策が必要である旨を伝えていました。
しかしサムが以前同じような状況で警戒令を出し、それが杞憂に終わっていた事実が邪魔をしました。
モターバの例は過去の事実とは因果関係は全くありません。
にも関わらずフォードは今回も杞憂に終わるだろうという判断を下します。
結果は一つの町で感染が拡大しアメリカ全土を危険に陥れるものでした。
人間は過去を過大評価します。過去の成功や失敗を異常なほど重要視します。
これは人間の遺伝子が長い期間統計を取り続けて、練り上げてきた戦略です。しかしそれは人間の寿命の期間においてのみ重要な戦略です。
生物種や文明、人間の作り出す国家などの巨大な組織においては人間の寿命のような短い期間での統計は当てはまりません。
国家や文明が目指すような人間の寿命を超越した長期的な戦略は人間の直感では導き出せません。
論理的に導き出す必要があります。
フォードは短い人間の寿命で取るべき短期的戦略を国家という超長期的な戦略策定が必要な組織に当てはめたから失敗したのです。
人間の寿命が100万年あるとするなら、交通違反者は長い寿命の中で必ず事故死するでしょう。
100万年の寿命がある個人において交通法規は守るべき長期的な戦略であり青信号以外で渡るなんてことは文字通り自殺行為なのです。
2800人vs2億人
ウィルスの感染拡大を恐れたマクリントックは街自体を焼却し騒動を収めようと試みます。
結局はホストを見つけ血清を作り出すことが出来たので終結させられましたが、それは映画のご都合主義です。
実際にこの状況が起きた場合の最善の答えってなんなんだろう。
命に重さがあるかどうかの議論は置いといて、この場合救うべきは2億人ですよね。
これが5対1とか2体1とかだとややこしくなりそうです。
そして2人は子供、1人はまあまあ高い経済力のある大人とか。
やっぱり綺麗ごと抜きにして命に重さってあります。資本主義なのでそれは現在に将来生み出すであろう価値を加味した経済的な価値になってくるんじゃないかと思いますね。
感想
これは普通にエンタメです。
パンデミックというちょっと馴染みのない状況を描くので敬遠していましたが、見てみるとかなり面白かった。
サムとソルトのコンビが痛快だし、正義と権力という構図も良かった。
そして無駄にラブシーンがないのもいい。
サムとロビーのロマンスも超自然でいい味付けになっていました。
最近の唐突で必要性に欠けるロマンスは誰が得しているのか分かりませんのでこれくらいがちょうどいい。
コメント