クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望
キャラクター
リング・スノーストーム
タイムパトロール。野原家の家の地下にタイムスリップしてしまいシロに憑依している。
春日吹雪丸
戦国時代で出会った15歳の武士。男性として育てられた女性。
両親はジョコマンに殺され妹は人質として捕られた。
雲黒斎(ヒエール・ジョコマン)
戦国時代へタイムスリップした歴史オタク。
歴史を改変し自らの都合のいい世界を作ろうとする。
長身で細身。
エンジ
気位の高い馬。
お銀
ジョコマンの作った吹雪丸母親そっくりの人形。
又旅猫ノ進
ジョコマンの部下。最初に現れる敵。
春日雪乃
吹雪丸の妹。
として紹介されているが実際は男。
見た目は母親に似て女性らしい。
この性格のため吹雪丸が男として城を支えていくことになった。
あらすじ
未来の時空管理組織のリング・スノーストームはパトロール中に異変を察知、戦国時代へ急行しようとするが攻撃を受けてしまい、緊急的に野原家のいる時代に着陸した。
戦国時代で起きた時間改変を阻止するためなぜか野原家と戦国時代へ向かうことに。
スノーストームはタイムマシンに閉じ込められているためシロの体を借りて行動を共にしている。
ネタバレ
考察
時間系SFとしての解釈
まず時間もののSFとして考えてみます。
面白い特徴として時間修正のタイムラグがあります。
本作は戦国時代で3日間過ごし、現在に戻りました。
しかし野原家が本来の時間へ戻る前にジョコマンがタイムマシンで平成へ先回りして歴史を改変していました。
この場合野原家が戻ってきた時代は改変され文化や価値観などが大きく変わっています。
過去から戻ってきた野原家は3日間別の時空に存在しているとみなされ記憶、持ち物といった過去から影響を受けるものに変化が表れるのは3日後になると説明されています。
この性質があるのでジョコマンの改変した過去からの影響から一時的に切り離され退治することができました。
元の時代の記憶を別の時代に持ち込めるということは、それを記述するデータベースがあって、さらに改変された世界を記述しているデータベースもある。
古いデータを書き換えるのにタイムラグがあると。
つまり野原家は新しいプロセスで、データの書き換えを要求している。だけどこの世界の描画を処理しているCPUは忙しくてなかなか処理を明け渡さない。
だからラグある、3日かかる。つまり仮想現実。
いつも思うんですがタイムマシンみたいに現在のある物体だけ過去へ送ることってできるのかなあ。
世界全体を戻すならともかくある物体を除いた世界だけを巻き戻すって。
蝶と生まれ変わり
この話では蝶がたびたび登場し重要な比喩になっています。
母親は蝶を生まれ変わりの象徴だと捉えていました。
吹雪丸と猫ノ進の戦い。
猫ノ進が蝶を斬り
「お前の母親は俺が斬った」
と言い放つと吹雪丸は激高しました。
実際に母親を斬り、さらに蝶を切ることで生まれ変わりをを否定したという二つの意味が込められています。
蝶を切られ激高していたことからも分かるように吹雪丸は母の言葉、「生まれ変わり」を信じており、劇中の蝶は生まれ変わりの象徴なのです。
風吹丸はその後お銀と戦います。
お銀「女は嫌いだ」
吹雪丸「私は女ではない!」
吹雪丸には男へ生まれ変わることへの長い葛藤がありました。それはみさえとのやりとりや長く束ねた髪を切り落とすのをためらっていたことからも明白です。
しかしその気持ちを誰にも分かってもらえなかったでしょう。
一番理解してほしいはずの母親を模したお銀に「女は嫌いだ」と罵られます。
しかし妹を助けるため、覚悟を決めた吹雪丸は女性の象徴である長い髪を自ら切り落とします。
「女」から「男」への生まれ変わりです。
最後に描かれるジョコマンを倒し過去を修正した世界。
縁側に座りうたた寝をしていた吹雪丸。
そこへ現れた別の現在では殺された母。
その時見ていた夢のことを母親に尋ねられます。
風吹丸は悪夢だったのか、いい夢を見ていたのか覚えていません。
すると蝶がひらひらと、長く髪を束ねた吹雪丸の指に止まります。
この蝶はもしかすると修正前の過酷な世界で自ら髪を切り落とし男へと生まれ変わった吹雪丸だったのかもしれません。
夢は夢から覚めて夢だと気がつく。
本当は今夢を見ているのかもしれません。
夢と現実は曖昧で本質的には区別はつきません。
その比喩表現として良く蝶が使われますね。
「胡蝶の夢」という哲学的な古い中国の説話です。
この作品においては生まれかわりの曖昧な瞬間、曖昧な境目の表現なのかもしれません。
吹雪丸とリング・スノーストーム
生まれ変わりがテーマである本作なのでリングは吹雪丸の生まれ変わりでしょう。
吹雪(スノーストーム)丸(リング)
短く切った髪がそっくりです。
名前と容姿もそっくりですが、劇中での吹雪丸とリング・スノーストームのジョコマンを退治するという宿命も同じ。
感想
野原家は二回戦国時代にタイムスリップしていたんですね。
吹雪丸の葛藤や蝶の比喩は分かりにくい描写で表現しているのでその分評価が低いのかもしれません(十分評価されていますが)。
ギャグに関してはそんなに大笑いしませんが、ストーリーはとても面白いですね。
一度は見てほしい作品です。
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