プリディスティネーション 感想と考察 過去と未来から完全に個人を切り離す離れ業

SF

プリデスティネーション

キャラクター

ジョン

両性具有の得意体質。

ジェーン

頭脳と身体能力に秀でた天才でそれ故に他人を理解できず孤独。
養護施設の前に捨てられていたところを助けられた孤児。

フィズル・ボマー

大量殺戮を行う爆弾魔。

あらすじ

主人公は時間を管理する政府機関に所属し爆弾魔の犯行を阻止することを生き甲斐としてるエージェント。
しかしその任務の最中に失敗、大やけどを負う。

ネタバレ

考察

ウロボロス

自分の尾を咬む蛇というのが作中でてきますが、ウロボロスのことですね。「死と再生」「不老不死」をあらわすとwikiにあります。
つまり循環を意味します。
始まりが終わり、つまり大きく広がっていった複雑な因果関係が同一の時空に収束するこの作品の本質を表現しています。
「卵が先か鶏が先か」
この冒頭のセリフも同様ですね。

整理

冒頭で任務に失敗し顔を焼かれた男。
彼はジョンです。名前がないので整理するために「火傷ジョン」とします。
火傷ジョンはフィズル・ボマーの正体は知りません。
彼は正義感に駆られて凶悪犯フィズル・ボマーの逮捕を生き甲斐としていました。
しかしタイムスリップを繰り返して事件を防ごうしても常に先を越されている。
度重なるタイムスリップは身体へのダメージが強く認知症やその他の精神病を引き起こします。
なので一人の人間がこなす任務には肉体的な限界がありました。
火傷ジョンはもう仕事をこなせるような身体ではありません。

フィズル・ボマーの逮捕に執念を燃やす火傷ジョンは自分自身の両性具有という特異体質であることを利用するアイディアを思いつきました。
それは自分自身で自分自身を作りだすこと。
さて整理します。

火傷ジョンは女性「ジェーン」だった頃の自分の元に出産を経て「ジョン」へと変化した未来の自分を送り込みます。
つまりもともと火傷ジョンは女性でした。
そのジェーンが男性のジョンへと変わるのは出産を経験したからなのでこの時点で因果関係が崩壊したおかしな話ではあります。

火傷ジョンは少し過去へと戻り過去の自分ジョンと接触、ジョンはさらに少し過去へ送られ、少し過去にいた自分であるジェーンと恋に落ちました。
ジェーンはジョンとの子供ジェーンを産みます。

そして火傷ジョンはジョンをロバートソンの元へ送り込み、フィズル・ボマー逮捕の仕事を引き継がせます。

その後火傷ジョンは病院で誘拐したジョンとジェーンの子供、「子ジェーン」を孤児院へ送りこみ、仕込みは完了です。
これにより因果関係が一点の時空に収束しました。

ロバートソンの元では火傷する前のジョンがせっせと仕事をこなしていきますが、任務を失敗し火傷。
仕方がないので火傷したジョンはジェーンを作り出すための時間旅行を開始。次のロバートソンの元へ送り込むジョンを仕込みます。
これが無限に繰り返されます。

どの時空のロバートソンも部下の肉体へのダメージを考慮する必要がありません、さらに因果関係から完全に切り離されたジョンは本来の史実への干渉を最小限に抑え込むことができます。ロバートソンが火傷ジョンのことを過去と未来から干渉を受けない云々と表現していたのはそのことでしょう。

ロバートソンは次々に送り込まれてくるジョンに仕事をさせることができるので定時であがれますね。
めでたしめでたし。

大仕事を成し遂げた火傷ジョンは元の時空に戻りほっと一息。
とりあえず任務は引き継げましたからね。
そして最後の仕事はタイムマシーンの機能を停止し歴史への干渉をやめること。

しかしエラーが出てしまいました。
魔が差した火傷ジョンはフィズル・ボマーの時間へ。
そこにいたのは老いた自分自身。
度重なるタイムスリップの後遺症で脳と精神に異常をきたしたジョンがいたのでした。

フィズル・ボマーは度重なるタイムスリップでおかしくなったジョン。
だから、つまりフィズル・ボマーが居たのが悪い。
え、でもフィズル・ボマーはそのジョンだから…ジョンが居なければフィズル・ボマーは生まれなかった…

じゃあジョンが生まれたないように…ジョンの母親のジェーン、その母親もジェーン、その母親もジェーン。
…というように始点へ戻ってしまいます。
いや、その始まり自体が曖昧で存在していません。
これがこのタイムパラドックスの奇妙なところ。
始まりも終わりも存在せず、ただ循環があるのみ。

巨匠ハインライン

「輪廻の蛇」というハインライン原作の小説が元となっています。
このほかにも「夏への扉」というタイムパラドックスを描いた作品がありますね。

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)


輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)

どちらも非常に面白い作品でぜひ読んでもらいたい。

タイムパラドックスどう説明すんねん

これは私が生きてる間に解決できるか分かりませんが時々考えてしまう問題です。
過去に戻れるのなら必ず発生する矛盾。
時間て何なんでしょう。

実は連続した時間があるという感覚だけが時間であり、本当は私たちの意識が作り出した錯覚かもしれません。
過去があった、未来があるという証明はできません。
本当は無秩序で不連続で原因も何も存在しない。あるのは現象の結果だけ。
今が存在しているという認識すら錯覚であり無限の時間の中で絶えず変化する宇宙の刹那の姿であるのかもしれません。

宇宙の始まりは?その始まりは?その始まりは?というように宇宙の始まりひいては存在の本質を考えた時、原因と結果という観点では行き着かない領域を感じます。
「有であり無である」「無限であり0である」という矛盾し定義できない状態にこそ本質が隠れている。
私はそれがこの世界だと感じています。

感想

登場人物がほとんどジョンという風変わりな映画ですがタイムパラドックスを逆手に取った面白いアイディアだと思います。
興味が湧いてきますよね。時間てどんな風になっているんだろう?って。
そう思った方は私が好きな作家のジェームズ・P・ホーガンの小説「未来からのホットライン」もぜひ読んでください。
これはシュタインズゲートがパクった?作品です。

ホーガン流の時間の解釈、とても面白いです。
現在は過去からだけでなく、未来からも干渉を受ける。
突飛なアイディアですが実際にも考えられているものです。
そして落ちでゾクゾクしてきます。

果たして時間は一方だけに流れているのか、いやもしかすると連続性という秩序すら私たちの主観が作り出した幻影なのかもしれません。

他のタイムパラドックス映画

タイムパラドックスについて知りたい

タイムトラベルについて書かれています。


Newton別冊『時間とは何か 新訂版』 (ニュートン別冊)


未来からのホットライン (創元SF文庫)


プリデスティネーション [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [DVD]

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