造物主(ライフメーカー)の掟 感想と考察 ホーガン流古代宇宙飛行士説、進化説

エンタメ

造物主の掟

あらすじ

火星の調査という名目で送り込まれた調査団だったが、到着した先は土星の衛星「タイタン」。
彼らの真の目的はそこで発見された生命体の調査だった。

遠い昔、ある知的生命体が資源の採掘のために開発した自律して資源を開発できる宇宙船が土星の衛星「タイタン」に漂着。
強い磁気に当てられて機能不全を起こしていた宇宙船の資源開発システムがエラーを繰り返した結果、自己複製できる機械が誕生した。
それは長い年月の積み重ねの末知的生命体にまで進化していた。

その知的生命体は人類史でいるところの中世と同じような文明を持っていた。

キャラクター

ロビーング

タイタンに存在する生命体のロビーング側の呼び名。
人間は彼らをタロイドと呼ぶ。
ロビーングが住む世界はロビアと呼ばれる。

ザンベンドルフ

希代の奇術師。
火星探索チームになぜか派遣された。

マッシー

地球の市民に受けいられられているザンベンドルフの正体を暴こうとする科学者。
彼も奇術を得意としている。

サーグ

ロビーング世界の異端者。
タイタンの宗教を疑い観察によって真理を探求する。

グルーアク

サーグの兄。
宗教ライフメイカーを信仰する敬虔な信者。

ライフメイカー

ロビア世界を作ったとされる神。

他の登場人物

他にもザンベンドルフ一味、調査団の政治屋、ロビーングに存在する複数の国家から様々なキャラクターが登場します。
多すぎるので割愛。

ネタバレ

考察

圧巻のプロローグ 無機生命体の誕生

あらすじにも書きましたが、資源の採掘機械として開発された機械が自己増殖を開始し、性別を持つに至る過程、さらに機械の植物と動物、肉食と草食が生まれれる過程を細かく描いています。
私達の地球でも同じことが起きました。
無秩序の中から電気的(くっつけばなんでもいいですが)に結合する分子構造が偶然出来上がります。
もしそれがある程度の時間安定して存在できる環境であった場合、それらはすぐに他の似たような特徴を持つ分子構造との競争に晒されます。

より安定して長時間存在できる構造が残り、短時間しか存在しない構造は無くなります。
すると空間内に同じ構造だけが増え始めます。
その中には他の分子構造とより強く結合できるものも存在するでしょう。
するとその分子は他の分子を取り込みどんどん巨大化していきます。

そしてある程度の大きさになってくると自身の重みで分解、偶然それが半分に分裂する構造であった場合、全く同じ分子構造が指数関数的に空間内に増殖します。
その中には推進力を得て動き出すもの、周囲にものを引き付けるなど様々な種類に偶然分化するため分子間の生存競争は激化していきます。

つまり一度自己複製する構造が生まれてしまえば、そららは必然的に競争に晒され徐々に構造は複雑化、獲得した能力は多様化していきます。
最終的には原始的なアメーバのような生命体になるはずです。これが淘汰圧、進化です。

この宇宙もきっと同じように無秩序の中に偶然秩序が生まれる環境ができたのでしょう。一旦秩序が生まれてしまえば、そこで誕生したエネルギーは安定できる状態を求めて形を変えていきます。

秩序が長続きしなかった宇宙はすぐ別のものに変化してしまいます。
この宇宙も変化の最中の一時的な形態に過ぎず絶えず変化する宇宙の刹那的な姿でしょう。

古代宇宙飛行士説

この作品は宗教の成り立ち、主に地球でのキリスト教の歴史を宇宙人の関与で説明しています。
古代宇宙人説をドーキンス流に解釈した作品ですね。
登場するロビーングに地球の調査団が命名する名前もキリスト教の歴史において役割を果たした人物達です。

機械の認識能力

機械の記憶や認識能力はどうなっているのかという話題があります。
厳密な記憶、正確なセンサーによる認識をするか?というもの。

しかし人間の認識も元をたどれば1と0、快と不快で構成されています。
それでも私達は曖昧な現実に対する認識を持っています。
同じように機械も人間と同じように曖昧な認識能力を持っています。
多くの階層を通して評価された刺激は1と0でも1.00010010…のように曖昧な数値で表すことができます。

政治色が強い

ホーガンの全盛期が冷戦時代というのもあって、非常にその時代背景を色濃く受けています。
旧ソ連と日本とアメリカ。
当時の日本とソ連がどれほど強い影響力を持っていたのか、戦争や政治が緊迫していて身近であったということだと思います。
現在の世界情勢と比べると異常に思えるほど影響力を持っていました。
アメリカは相変わらず覇権を持っています。

人類の策略

ロビアでのロビーング達はそれぞれの国々で争いを続けていました。
調査団の目的はタイタンで発生した機械生命体の構造を理解しソ連を出し抜くこと。
そのため地球でも使い古された方法でロビーングを支配しようと試みます。

ロビアの国々と密約を結び武器を供給、ロビア各国の力関係を裏で操り労働力と知識を支配する。
地球の先進国が途上国で使ってきた手です。

結局はそれに反対するザンベンドルフ一味が総力をあげて阻止をすことになります。

奇術師ザンベンドルフの本領

ザンベンドルフは奇術師の力を使いグルーアクを「教化者」、人類史でいいうところのキリスト、モーセに仕立て上げます。
グルーアクの奇跡を各地で演出、それによりグルーアクを信仰するロビーングを増やしていきます。
ロビアを利用しようとする政治屋vs奇術師ザンベンドルフの対決の始まりです。

聖書を模した演出は、もしかして聖書の内容って正しいんじゃないか?
宇宙人が関与したけどそれを理解できな人類が奇跡や神の御業だと記録したんじゃ?と思えてくるほど。

最後の伏線

最後のエピローグでは実はもう一種類の宇宙船がこのタイタンの文明を見守っていたという事実が判明します。
造物主の選択という続編でこのロビアを作った人類とは別の生命体の話が出てきます。

感想

冒頭のロビーング進化史、ホーガン流の古代宇宙飛行士説、そして逆転に次ぐ逆転と伏線の回収。
完全に理解しようとすると登場人物の多さ、ロビアと地球の複雑な国際情勢、出版された時代の背景を理解する必要があるので難しい。
読み進めるのに少し気合いが必要です。

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造物主(ライフメーカー)の掟 (創元SF文庫 (663-7))

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